14人が本棚に入れています
本棚に追加
「宵闇さん、曲作って歌詞書いてアレンジしてベース弾いてシンセ作ってプロデュースしてディレクションしてだから…」
綺悧は宵闇をじっと見つめ、手を合わせる。おいおい、仏像じゃねぇぞ。
「お世話になってます」
見ると、ひそっと礼華も手を合わせてる。何だこの宗教は。
でも、何かお客さんにはウケてるみたいだから、いいか。
「はい、じゃ、そろそろね、次行きましょうか!」
礼拝を終えた綺悧は、フロアに向かって明るくそう宣言する。
「あ、待って。ちょい待って」
朱雨が焦った様子でストップをかける。既に気持ちが次の曲に行ってた俺はつんのめる。
「なに、朱雨くん」
「チューニングが合わねー」
「ちょっとー!」
朱雨は何やらぶつぶつ言いながら、頻りに首を傾げて、ペグをちまちま回してる。おいおい、マジかよ。何やってんだよ。
「はーやくー!」
「今話しかけんなて」
そんだけやって合わねぇんなら、どっか部品がトラブってんな。スティックを回しながら、朱雨の様子を眺める。
「しょうがないなぁ。もうちょっと喋ろっか?」
お客さんは、それでも歓迎してくれる。悪ぃな。曲も聞きたいよな。
最初のコメントを投稿しよう!