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でも、こいつ頑張ったよ。俺は全く期待してなかった。こいつは、レコーディングの最後の最後までこれで苦しんだ。今まで頭なんか使わないでレコーディングしてたこいつがだ。その努力の結果、最高のテクニックとかオリジナリティとかそういうもんとは別に、きっちり耳に残るソロになってる。
いくら上手くても綺麗でも、耳に残らなきゃ意味ねぇよ。そこを、こいつは乗り越えた。
センターでスポットを浴びてる朱雨の背中は、めちゃくちゃ楽しそうだ。気持ちいいだろ、自分が作ったもんで、こんなに注目を浴びるのは。
ソロの後は、前半とはまったく違うテンションで、どんどんヒートアップして行く。綺悧の絶叫は、聴く方の正気も奪う。
本気でこいつ、おかしくなっちまったんじゃねぇのか、って心配になるくらいだ。
恐怖と戦慄が、フロアに詰まってる人達に伝染して行く。取り付いた恐怖を振り払いてぇみたいに、フロアは激しく蠢いている。
二度と正気に戻れないところまで行き着いた綺悧が、悲鳴のようなシャウトを浴びせかけ、Wheelが終わった。
「ありがとうございました! 皆ヤバいね! その辺ぎゅうぎゅうだけど大丈夫?」
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