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 綺悧がにこにこしながら前のお客さんに話しかけると、その辺の子たちがうんうんと頷く。あの子たち、楽しそうな顔してんな。ああいう顔見ると、俺らも嬉しいよ。自己満足だけじゃなくて、誰かも満足させられたんだってわかるから。 「もう物販行ってきたよって人、いっぱいいると思うけど…」  綺悧がフロアを見渡すと、行った! って声があちこちから聞こえる。 「わー、ありがとう! 今日のグッズをちょっとね、見てもらおうかなと思うんだけど…秋本さーん!」  袖に向かって綺悧が呼ぶと、小柄な小太りのおっさんが、照れ笑いしながら出て来た。秋本さんも事務所の人で、江崎さんの上司だ。大抵、江崎さんの方がお高く止まって偉そうだから、腰の低い秋本さんはあんまり上司っぽくねぇけど。  お客さんも秋本さんはお馴染みなのか、拍手とコールで迎えてくれる。 「はい! 秋本さんが着てるこのTシャツ! 本日限定デザインで、お値段何と3800円!」  普通だわ。  秋本さんはくるくる回って、プリントを見せる。
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