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付き合う相手は、他の人間と被らねぇ呼び方をする主義だ。「夕」と対になるのは、「闇」でも「義弘」でもなく、「宵」だから、「宵」で決定だ。そもそも長ぇんだよ、「宵闇」は。ずっとめんどくせぇと思ってた。
って言っても、人前で呼ぶことはねぇけど。クールでクレバーでワンマンな孤高のベーシストである宵闇が、恋愛にうつつを抜かしてんのを人に勘づかれるわけにはいかねぇ。イメージ商売だからな。
それに、ベルノワールの鉄の掟がある。
ファンとの恋愛絶対禁止。
恋人のライブへの出入り禁止。
人目につくデート禁止。
これに従うと、俺、メンバーなのにライブ出禁だぜ。バレちゃなんねぇ。
いつまでもニヤニヤしてる宵闇にちょっと呆れる。そんなに嬉しいか。
俺も、こいつの下手くそな告白は嬉しかったけどさ。割と前から、こいつ俺に惚れてんなってのは気付いてたから、爆発的な嬉しさでもねぇ。解放感はあるけど、案外冷静だ。
でもこいつ、全然俺が惚れたことには勘づいてなかったからなぁ…しゃーないか。その上、いきなりキスしてやったからな。
「宵、やり直せ」
「え?」
「おやすみのキス」
「あ、今、した…」
「お手本だわ」
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