一里塚

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 暗闇に、小さな水溜りに水滴を落とした時のような粘り気の水音が広がる。男の指が小鶴に侵入を試みる。殿方と関係を持ったことはあるが、小さな傷を開かれたような小さな痛みに、小鶴は腰をよじった。   「ああ、そんな……恥ずかしゅうございます」  小鶴は、その男の塊の根元から先端へと手のひらを滑らせて、先端から根本へ再びたどった。衣が擦れる音が暗闇に広がる。その塊から溢れた粘りが小鶴の手のひらに溜まり、粘りを含んだ音に変わっていく。    男の「ああ」という熱を帯びたため息のあと、水を求める池の鯉のように男の身体が弾け震える。時折、身体を弾けさせるのは男がそろそろ最後の時を迎えるという合図だ。絶頂を迎えるときに男が一番油断するのだ。  ――そろそろだ。   「もう、限界だ。では、そろそろ頂くよ」と、熱い吐息混じりの声と共に男の身体が覆い被さる。男の手が自分の着物の裾を捲った。腹まで伸びるくらいの赤黒く|熱り立った男性の塊がよだれを垂らした蛇に睨みつけてられているように見えた。   「ああ、焦らないでくださいませ」  指で男の裾を戻す。天狗の面のように男の裾が浮き上がっていた。  
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