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と言い終えるや否や男の身体がまな板の上の魚のように跳ねた。男の肉塊も小鶴の手のひらの中で跳ねる。
――今だっ。
小鶴は自分の手のひらに力を込めた。揺れる男の小さな袋を。それはまるでクルミでも握り潰す。
「ひっ、ぎゃあ! て、てめえ、なにするんでェ。ウグッ!」
男の喉元を押し上げる。と、大きな身体が飛んだ。
小鶴は、ヒラリと松の枝に飛び移った。カサっと松の葉が揺れる。
「チッ、この猿っ、舐めやがって! 降りて来い本当に叩っ斬ってやるわ」
辛そうに腰をかがめ、頬を高潮させた男が松の下で左側の腰に手をかけ刀を抜く素振りをしてみせた。
「あっ、ああ、これね。手裏剣はこうして打つのよ」
「なんだ、おめえいつの間に……」と、男が言い終える前に、小鶴は男の脇差を彼に放った。松の上から。打った脇差がザクッと音を立て男の足元に突き立つ。
「ひっ」という声のあと男が腰を抜かしたように後ろに尻もちを着いた。
『寺坂……』
何者かの声が小鶴を呼んだ。右の臀たぶにチクリと刺激を感じる。
「えっ……」
痺れのような感じに身体が包まれる。フワリと身体が宙に浮いた。
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