★魔女と魔女の再開★

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★魔女と魔女の再開★

時はお昼頃、カズヤとエルマは大きな木製の丸テーブルに椅子を置き座っていた。 そして前にこの世界に来たレンとのエピソードをカズヤに語っていた。 「さてエルマ、俺の爺さんとの関係を聞かせてもらおうか」 「いいだろう、あれはそうだなぁ~ 今から数十年前、レン君が今の君と同じように突然この世界にやって来て私と出会った」 「数十年前って、お前いくつだよ?」 「女性に歳を訊くのは失礼じゃないか?」 「まぁいいや、少なくともお前はもう人間年齢で言ったらババァの域ということはもうわかったからな」 「あぁ! 言ったなぁああ! ババァだと!? 本当に死にたいのか!」 「そんなに怒るなよ、シワが増えるぞ」 「増えるって言うな! 私はまだシワ一つ無いピチピチの女の子だ!」 「ピチピチねぇ………。」 カズヤは『へぇ~』という感じの顔をしながらやれやれというポーズをとって呆れていた。 「ムキィイイイ! そんな顔で私を見るなぁあああ!もういい! 話しを戻すよ!」 「あぁ、早くしろ」 「偉そうに言うな!」 もうなんだって私のことをこんなに苛めるんだ! あのレン君の性格を知っているがゆえに、カズヤの性格にはついていけない! 「はぁ、じゃあ続けるよ。レン君と私は少しの間だけ一緒に生活したり冒険もしたんだ」 「ふ~んそうか、でもなんでずっと一緒にいなかったんだ?」 「うぐっ、それは………。」 あぁ、その質問は当然だが何だか悲しくなってきた。 当時の記憶が今よりより鮮明に思い出すからだ。 でも訊かれたのだから話さないと。 「それはね、レン君は元の世界に帰ったからだよ」 はぁ、思い出したら涙が出てきそう。 「そうか……。寂しくなかったのか?」 「…………。」 そんなの………。 「そんなの……寂しかったに決まってるじゃん!」 「……っ!?」 カズヤはエルマの顔を見て驚いた! 何故ならエルマは今レンと別れたときの思い出が蘇り泣いていたからだった。 「私がどんな思いであの時自分の気持ちを言うのを我慢したと思っているんだ!」  はぁ~ 最低だ~ これじゃあカズヤ君に八つ当たりしているだけじゃないか。  レン君との話をしてあげると家に招いておいて怒るなんて、私は最悪の女だ。 「………悪かったな、嫌なこと思い出させて」 「えっ?!」  何で謝るの? 私が悪いのに………。 「別に傷つけるつもりはなかったんだ。ただ少し興味があったから訊いただけだが、人を悲しませるまでして訊きたいとは思わない」 そうだ、そんなことをしたら俺は最低な奴だ。 「だからもういい……。」 「うぅ………。」  カズヤ君……根は優しい子なんだね。  でも謝るのは私の方なんだ、私が理不尽に怒っちゃったんだ。  だから……。 「いや、カズヤ君は何も悪くないんだ、悪いのは私だ……怒っちゃってごめんね」 エルマはカズヤに深々とお辞儀をしながら謝った。 そんな様子を見ていたカズヤはエルマに近づいてから右手で頭を優しく撫で始めた。 「辛かったんだな……エルマ………。」 カズヤは最初こそ少しきつい話し方をしていたが、エルマの話を聞いていると段々純粋で傷つきやすい女の子なんだと思い優しく接するようになってきた。 「うわ~ん、あまり優しくしないでよ~ ひっぐ、ひっぐ……。」  そんなに優しくされたら魔女の威厳がなくなっちゃう。 エルマは泣き顔を隠すため両手で顔を覆った。 「うぐぐ……レン君と言い君と言い、何で二人して私を泣かせるんだぁ~」  あぁ~ 大魔導士であるこのエルマの泣き顔を晒すなんて!  しかも大人なのに! カズヤ君よりお姉さんなのに! 『人生最大の屈辱!』と彼女は思いながら必死に泣くのを止めようとしたが、カズヤがそれを察したのか『泣きたいときは泣けばいい』と言ったので余計に泣いた。 「だからもう私に優しくするなぁああ、うわ~ん」 エルマはこの日、大魔導士の威厳がなくなったと思った……。  エルマが泣き出してから数十分後、段々落ち着いてきたのか泣くのを止めた。 そして今後についてカズヤに問いかけた。 「それで…ぐすん………カズヤ君もやっぱり元の世界に帰りたいのかい?」 「そうだな~ 俺は今のところ帰りたいとは思わない」 「何故だい? 向こうの世界には君が帰ってくるのを待っている人がいるんじゃないのかい?」 「いや、そんな人はいない……何故なら俺は施設で育ってきたからな、親の顔なんて見たことない」 「えぇ?! 親がいないって……じゃあレン君のことはどうやって知ったの?」 「爺さんのことは施設の人から聞いた、なんでも俺に教えてきた施設の職員は俺の爺さんの知り合いらしい」 「そうなんだ……。」  カズヤ君、親の愛を知らずに育ったんだね。  あぁ…可愛そうに……。  そりゃああんな性格に育っちゃうわけだ。 「………カズヤ君、それなら私が面倒見てあげる!」 「面倒を見るって……何故そんなことをするんだ? 爺さんの孫だからか?」 「それもあるけど、理由はほかにある」 「どんな理由だ?」 「それは、君に家族の愛を教えてあげたい、母親からの愛情を教えてあげたい!」 エルマは『さぁおいで』と言わんばかりに両腕をカズヤに向かってまっすぐ伸ばした。 ちなみにこの時エルマの両手は開いている状態で、顔は耳まで真っ赤になるほど顔が赤くなっていた! 「あぁ………。」  唐突の告白だな……どうするか…。 「………………。」 あぁああああ! 恥ずかしい! 今私は出会ったばかりの男の子に貴方のお母さんになってあげる! と遠回しに言ってしまった。 でも、カズヤ君の生い立ちを聞いていたらつい甘えさせてあげたいと思っちゃったから。 きっとこれは母性本能だからしょうがないじゃない! 「……………。」   というかカズヤ君ずっと黙ったままじゃないか、もしかして気持ち悪いと思われてしまったかな。 エルマは自分の発言に段々後悔していき、更には心拍数まで上がってきた! 『ドクンっ、ドクンっ!』と心臓の鼓動が早くなっていく。 カズヤの返答内容がどんなのか不安になって胸が苦しくなってくる。 そんな状態になりながらエルマはカズヤの返答を待った。 そしてカズヤは返答するために口を開いた。 「ははは、これはまた……俺の母さんは随分と若いんだな」 「えっ?!」 「いいだろう、エルマの息子になってやる。ただし、外ではエルマ……いや、母さんを母さんとは呼ばない、何故なら変な誤解を生むからだ」 「誤解って?」 「いやだってほら、どう見ても同い年ぐらいに見える相手にお母さんなんて言っているところを人に見られたら何か変なプレイでもしていると思われるからさ」 「変なプレイとは何のことかさっぱり分からないが、でも嬉しいよ!」  やったあ! 断られたらどうしようかと思ったからよかったぁ~ 「じゃ、じゃあ、今日から宜しくね…あぁ~え~と~カ、カズヤ……。」 「あぁ、宜しく母さん」  まさか異世界に飛ばされて母親ができるなんて思わなかった。  しかも見た目は俺と同い年ぐらいの女の子、まぁ年齢的には問題ないくらい差があるが。  まぁでも、エルマは喜んでいるようだし、俺は俺で母親というものが何なのか知ることができるしな。 カズヤは少し微笑んだ顔になりながらこの世界で過ごそうと思った。 そして、エルマもカズヤという子供が出来たことが相当嬉しかったのか、かつてないほどの良い笑顔になっていた。   嬉しい! 今日は凄く良い日だ! まさか自分の子供が出来るなんて!  これからはどんなことをしてもカズヤを護るし、愛情も注いであげる! 「ふふ、これが母親になった気分なんだね♪ 今ならレイの気持ちが分かるかもしれない」 「レイ? レイって誰なんだ?」 「あぁ、カズヤは知らないよね。レイっていうのは昔レン君と私が一緒に戦った白髪の魔女のことさ」 「時間を操る強敵の魔女で、自分の子供に対して凄く執着を持っていたんだ」 「そうなんだ、ちなみに時間を操るってどんなことが出来たんだ?」 「そうだね~」 エルマは一回咳払いした後に少し曇った顔をしながら言った。 「正直言うと大魔導士の私から言わせてもらってもアイツの能力はチート級だ!時間を操るというのがとても厄介でね、出来る能力を全部言うと時間を止める、時間を戻す、時間を加速、時間を減速、そして今言った能力を同時に使える時間支配、更には過去の自分の時間からクローンの生成も可能ときたものだ!」 「そりゃあチート級だな、使い方次第では無敵じゃないか」 「そうだとも! だからもう二度と戦いたくないと思っているよ!」 「ははは、そうかい……でもそういうとさっきから家の外にいる白髪の人物はそのレイって奴に似ているな」 「何だって!? どこにいるの?!」 「どこって、ほらあそこだ」 カズヤは窓からその人物がいるであろう方向に指をさした。 するとカズヤの言う通り、白髪の女の子がポツンと立っていてエルマの家をじぃっと見ていた。 「本当にいるじゃないか! 何で今頃!」 エルマは強張った顔をしながらカズヤに言った。 「本当にレイだったら大変だ! カズヤ、私がいいと言うまで家を出ちゃダメだよ!私はこれからアイツの姿を確認してくる!」 「大丈夫か? もしアイツが本物だったらすごく危険だぞ!折角できたばかりの母親を失うのはごめんだからな!」 「大丈夫♪ この大魔導士エルマが可愛い息子を残して死ぬわけないじゃないか」  そうだ、こんなところで死んでたまるか! 折角できた私の子供を残して死ぬなんてとんでもない! 「安心してくれ、私はどんなことをしても君を護るし生きても見せる!」 「だから……私を信じて大人しく待っててね♪」 エルマはそういうと足早に家から出て行った。 「……………。」  母さん、本当に気をつけろよ。 カズヤは心配そうな顔をしながらエルマを見送った。  エルマが家を飛び出してから数分後、白髪の女性に見つからないように大木の物陰から様子を見ていた。 「…………。」  う~む、やはりレイに似ている。だが容姿が少し違うかも。  レイと同じ白髪ではあるが、背が百四十三センチぐらいしかない子供だ。  生意気に胸は大きいけれど……。  あとは髪がショートヘアーで、猫耳と尻尾がついている……。もはや人間ではないようだ。 服装は…何だあれ? 着物? 灰色の着物のようだ……多分………。 「う~ん……アレはレイではないのか? レイの子孫? それとも子供かな?」 エルマは暫く白髪の女性、というよりは女の子を観察していた。 五分、十分、十五分という感じに怪しいことをしていないか用心深く見ていた。 すると突然、エルマの肩を背後から叩いて話しかけてくる十七歳位の少女がいた。 「あの~ さっきからレイちゃんのことをず~と見ているようなのですが何か御用ですか?」 「うわっ!?」 突然話しかけられたことによって大魔導士様はすごく驚いた! そして驚かれた少女もエルマの声に驚いた! 「ひゃっ!? 何ですか、いきなり大きな声を出して!びっくりするじゃないですか!」 「びっくりしたのは私の方だ! いきなり話しかけるな!驚いて心臓が止まるかと思ったじゃないか!」 エルマは心臓がバクバクするほど驚かされたので話しかけてきた少女に怒りの感情をぶつけた! すると話しかけてきた少女はショックで泣き出してしまった。 「ふええええん! 普通に話しかけたのにぃ~! ただ何の用があるか訊きたかっただけなのに! え~ん!」 「あぁ……。」 e79efcff-cce7-4415-9a2a-5ae7ac6915f3 まさか泣かれるとは思っていなかったので、エルマはあたふたした。 「……………。」 ヤバい……まさか泣いてしまうとは…………。  このままだと完全にこっちが悪者だ! それに私がいることがあのレイに似たやつにバレちゃうじゃないか!  早いところこいつを黙らせないと! 最悪は強引にでも黙らせる! 「静かにしろ! 黙らないと魔法で気絶させるぞ!」 「ひぐっ! それは嫌だ……ぐすん………。」 「よし! 黙ったな、それじゃあそのまま泣くのをやめろよ!」  ふぅ~ これでアイツにバレずに済む。 話しかけてきた少女を黙らせて安心を得た大魔導士様は再度確認するために後ろを振り返った。 しかしその瞬間驚くことになる! 何故ならエルマが後ろを振り向いた時には既に目の前に白髪の少女が立っていて、エルマをじぃ~と見ていたからだ! そして睨みつけてきながらこう言った。 「レイラお姉ちゃんに何をした! この性悪女!」 9623b5db-ab6b-4182-a777-7b34991d3138 「なっ!?」 「お姉ちゃんを泣かせて苛めたんだね……許さない!」 「まずい! こいつ私を殺す気だ!」 「ふええええ! レイちゃん待って!」 「暗き闇より具現し、対象を撃ち抜き葬りされ! ダグルメア!」 レイと呼ばれた少女が魔法を唱えると、手からサッカーボール位の大きさの闇の球体が出現してエルマめがけて飛んで行った! 「うわぁああああ! マジで打ち込んできた! 仕方がない、こうなったら!」 エルマは飛んでくる魔法をくらわないように後ろにジャンプして少し距離をとってから魔法を唱え始めた! 「我が魔力よ、我が盾となり我を護れ! マホルム!」 エルマが魔法を唱え終えると、目の前に半透明な魔法の壁が出現した! そしてその魔法の壁にレイの魔法が当たり、無事に防ぐことが出来た。 「よしっ! 防いでやったぞ!」 「ぐぬぬぬぬ!」 エルマに魔法を防がれてしまった少女レイはすごく不服そうな子をしたが、すぐに真顔に戻り二発目の魔法を準備し始めた! 当然エルマの方も反撃するために闇魔法である『ダグルメア』の対となる属性、光魔法の『セルティエル』の演唱を始めた! そして二人とも演唱が終わり魔法を放った! 「ダグルメア!」 「セルティエル!」 お互い自分の放った魔法が相手の魔法を打ち消し攻撃が当たる! そう思っていたが、突然二人にとって予想外の出来事が起きた! それはさっきエルマが泣かせた少女ことレイラが魔法と魔法の間に『ダメ~!』と言いながら入ってきた! 「うわっ! バカ! 何で入ってきた!」 「あぁ! レイラお姉ちゃんが! もう間に合わない!」 二人とも魔法がレイラに当たってしまう!  そう思ったが、またもやその予想は覆された! 「私の時間を支配する魔力よ、時を破壊して存在を消滅させよ! タイム・オブ・ブレイク!」 レイラが魔法を唱えると、『ゴーン』という音と共に二人が放った魔法が消滅した! その光景を見た二人は一瞬で消え去った魔法を見て驚いた顔をしていた! 「…………。」  こいつ、今時を破壊せよと言っていたが、何だその魔法は!  全然聞いたことがない魔法だ!  しかも時間を支配できる魔力をこいつは持っている!  まるで五月雨レイみたいじゃないか!  何なんだ、こいつの正体はいったい……。 「………………。」  今お姉ちゃんに向かって行った魔法が消滅した。  お姉ちゃんが無事なのは良かったけれど、あの魔法はいったい……。 二人とも不思議そうな顔でレイラの方を『じぃ~』という感じに見ていたのでレイラは『何々?』と困惑した顔になった。 「ふえ? 二人ともどうしたの? そんなに私の方を見つめて……ちょっと恥ずかしい」 レイラは両手を頬にあてて恥ずかしそうなポーズをした。 「くっ……。」  中々可愛らしい動きをするじゃないか、この童顔白髪巨乳! 「…………。」  レイラお姉ちゃん可愛い! その角と言い紅い目と言い、物凄くいい!  それにすごく優しい。さっきだって私とあのバカの喧嘩を身体をはって止めようとしたほどです。 心は誰よりも純粋で綺麗です。 「………………。」 レイは心の中でレイラのことを褒め称えまくった後、エルマの方をちらりと見てからこう思った。   はぁ、それに引き換えこの女は……行き成り現れて物陰から私を監視し始めると思ったら今度はお姉ちゃんを泣かして、とんだクズ女です。  こういう奴はとっちめてやるのが一番いい!  だけどそうしようとすると心優しいお姉ちゃんに止められる。  さてと、どうお仕置きしてあげますか。 『人は仮面を被り生活している』レイの性格はまさにこの言葉にあたるくらい内心でとんでもないことを考えている女の子。 だがエルマの方も負けてないぐらい内心は真っ黒だった。    さて、どうしようかな、この生意気女を。  魔法でぶっ飛ばしてやってもいいけど、今やるとこの純粋童顔女に邪魔をされる。  そうするとこの女がいない時にこのレイを張り倒さなければ!  そう……これは決して私情ではない! あくまでもカズヤを護るためだ!  こいつがレイである以上生かしといたら危険だ!   まぁついでに私にたてついた分も含めてお仕置きしてやるけどね♪ 二人とも心で相手をやっつけることばかり考えていたので、顔も自然と笑顔で睨みあっていた! ちなみに今この場にいる三人のうち、レイラだけは腹黒くはなく心の底から二人を心配していた。  あわわわわ、二人とも睨みあっている! ど、どうしよう!  もしも互いに傷つけあいを始めたら二人とも大怪我しちゃうよ!  それだけはダメ! 何とかして止めないと! レイラは何としても争い起させまいと方法を模索し始めた。 「………。(レイ、再び敗北を味合わせてやる!)」 「…………。(お姉ちゃんを苛めた報いを受けてもらうぞ!)」 「……………。(うぅ~ どうしよう~)」 互いにそれぞれの思いを持つ三人の少女たち、この行方はどうなるのか! ちなみに、この時カズヤはエルマの家にあった紅茶を飲みながらエルマの帰りを持っていた。                      つづく
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