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咲き誇る
幸運は運命として認めて
不運は運命として認めない。
世の中の人達は皆そう解釈してるに違いない。
去年、俺は不慮の事故で死んだ。
妻を置いて死んでしまった。
まさかテレビやネットで起きている不慮の事故が自分の身に起きるなんて前日にも、数分前にも思わなかった。
俺と妻は共に社会人だったから、俺の訃報を聞いても精神を病んでないか、ちゃんと食べれているかだけが心配だ。
あれから一年は経つだろうか。
どこにさまようわけでもなく、俺は妻と出会った公園にいる。
目の前に咲き誇る公園の大きな桜を見ると、この公園の桜の樹の下にあるベンチに座って他愛もない話を良くしたものだなと俺を懐かしくさせる。
四月は出会いと別れの季節だ。
俺と妻が別れるには少し早かったけど。
望むなら、彼女が立ち直ってくれるのが一番だ。
俺としてはあまり好ましくないが、新しい出会いを見つけてまた幸せになってくれるのも、それもまた良しだ。
「来ちゃった」
でも妻は来てしまうのだ。
おどけながらも、愛らしい表情で俺を探しにきたのだ。
彼女もまた桜と同じように早く散っては
俺の心に咲き誇る。
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