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ーーー数年後。 ざぁっと桜の吹雪が俺を通り過ぎていく。 あの日からかなりの時が経ってしまった。 俺はあれから大学を卒業して、しがないサラリーマンとなった。 「……お狐様、元気かな」 ぼぅっと桜の木を見上げて呟くと楽しそうな家族連れの声が耳に入ってきた。 ……やっぱり、ああいうのが幸せっていうんだろうな。 もう、俺には手が届かないけれど。 ふ、と笑みを零して歩き始めた俺の手を温かな手が包んだ。 横を見れば昔から見知った顔が締まりない笑顔を浮かべていて、俺もつられて笑った。 「春彦、置いていかないでよ」 「…晃がさっさと来ないからだろ」 そう言って顔を見合わせて、プッと吹き出した。 お互いの左手の薬指には、お揃いの指輪。 あの日の出来事は、俺たちだけの秘密だ。 ーーー6月はもう晴れる日はこないだろう。
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