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姫神様の話
昔々。
大きな戦がいくつもいくつもありました。人々は皆、かなしみ、くるしみました。そこに大雨が降りました。
大神様は、あまりに人が争うので国を洗い流してしまおうと思ったのです。ですが大神様の考えは人々にはわからないことだったので、みな一生懸命祈りました。神様、どうか雨を止めてください。こどもを助けてください。父を母を助けてください。たくさんの祈りが天上にあがりました。
大神様は考えます。
考えましたが、やはり洗い流してしまおうと決めました。しかし姫神様がそれはいけないと願い出ます。
姫神様の御子の白龍が人に力を貸し、大層喜ばれ、この地にお社を寄進されたばかりでした。
大神様はまた考えます。
そしてなんだかとても面倒くさくなってしまいました。ですから姫神様に、後は任せると云い残し大雨もそのままに天に上がられてしまいました。
湯の湧く池のある山も里も深く深く煙っていました。白湯の村人は湯を呑むことで生きながらえていました。その夜は一層霧深かったそうです。
さわさわと声が聞こえます。
村の爺様たちのばぁさまや母さまから聞かされた温泉を湧かせたお坊様の話です。さわさわと声が聞こえた、と云っていたじゃないかと。だからこれは神様の声だ。語り継いできた村人にはわかりました。
白龍に似合いの強い力をここに連れてこよう。雨を止ませましょう。待っていなさい。
そうして白龍様に新しい神様の輿入れがありました。二神で一神となり、名を真白様と改めました。
大雨は止み、村人はみな久しぶりにみるお天道様ときらきらと光り輝きたなびく白い二筋の雲に目を細めるのでした。
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