紐付け

7/10
前へ
/132ページ
次へ
青池の話 昔々、青池とよばれた池がありました。地中から渾々と湧き出る美しい青い水をいつもたたえておりましたが、白々とした骨のような枯れ木が池の底には積みあがり、池に生き物はおらず、山深いこともあり人も立ち寄りません。青池は寂しくありました。 ある日、珍しいことに人間がさまよっておりました。命はつきかけておりました。青池は哀れみましたが、池の水は生き物には毒となり飲ませてあげられません。 そこに龍神様が現れました。 青池は大層驚きましたが、哀れんだあの人間に水を与えたいとお願いしました。龍神様は水を統べるの神様の一柱ですから簡単な願いごとでした。 青池が寂しくも耐え、池を守ってきたことも知っていました。そうして龍神様は青池を透明な湯に変えたのです。人間は湯になった池に三日三晩浸かり傷を回復させ青池にも感謝して去りました。 湯になった池にはたくさんの動物がやってきました。青池は生まれて初めて泣きました。ずっとこのまま、透明な湯の池になりたいと願いました。龍神様の加護は一時と決まっていますから、やがてまた冷たく美しい青池に戻ります。きっともうこの先は寂しくて耐えられないと涙したのです。ですが人間が去ってからも青池は透明な湯のままでした。 しばらくして、山をおりた人間が他の人間たちとやってきました。そして青池に龍神様の加護をもつ幼い白龍様を祀りました。青池はどうしてよいかわからなくなりました。幼い白龍様は、しっかりとしたお社で祀られ護符に力を与えるのです。この小さな護符も、もちろん白龍様の欠片ですが幼く、しかも本殿のお社から遠く離れているのです。すぐに力尽きてしまうでしょう。青池はまた泣きました。 泣き止まない青池に森の動物たちは、お供えの木の実を持ち寄ります。青池に白龍様を透明な湯のうちは池に浸かり体を休めて眠るといいと教えます。青池は、白龍様に龍神様の加護のあるうちは力になろうと泣きながら謝りました。自分はただ美しい毒の青池なのです。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加