紐付け

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青池は久しぶりに昔のことを思い出していました。白龍様は雄々しい神様になっていました。相変わらず透明な湯の池は、地下を通り人間たちが暮らす里にも湯を流すことができました。青池は里の様子を眺めたり、池にやってくる動物たちや白龍様と過ごします。いつかの龍神様が白龍様だったように感じました。白龍様が龍神様なら青池はもうずっとずっと透明な湯の池のままでいられます。青池は願いが叶ったと嬉しくなりました。 だから罰が下ったのだと思いました。池の湯が溢れかえる大雨に山も里も白く霧が立ちこめます。木の実も取れず、住処は土砂に埋もれ、動物たちはみな青池に集まりました。冷たい雨の中、青池だけは温かく、氾濫した川の水が濁っても青池の湯は透明で喉を潤おせました。青池は自分が欲をかいたのだ、龍神様の加護を我が物と思い上がったのだと白龍様に詫びました。けれど誰も青池を責めません。青池が冷たく美しい毒だったのはずいぶん昔でもう知るものは居なかったのですから。 青池はいつかの龍神様に祈りました。 白龍様は立派になられました。 湯の池としての愉しい日々をいただき青池は幸せでした。加護をお返しいたします。青く冷たく美しい毒の池に戻ります。ですからみなを助けてください。雨を止ませてください。 白龍様は青池が泣くのが悲しく泣かせる大神様を悔しく思いました。村の人々の信仰は厚く十分に祀られその分加護を与え、この大雨が降り続くまでは、憂いなどひとつもなく満ち足りていたのです。神なのに不甲斐ないと白龍様が青池に詫びました。青池はただただ首を横にふりました。雨はますます強く霧はますます濃くたちこめ、すぐ隣にいる動物達の気配すらわからなくなりました。
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