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青池の加護を返すか。
お返しいたします。青池には勿体ない加護でございました。
鈴が揮うような囁きに青池は迷うことなく応えます。あのときの龍神様とは違う御方ですが此方も龍神様だと青池にはわかります。
白龍様がうめき声をもらしましたが口を挟むことは出来ません。憂いは不要です白龍様。青池は元に戻るのです。
別れを惜しむがいい。
今宵その加護を持って雨を止まそう。
低く低く白龍様が唸ります。青池は白龍様の御心が嬉しく幸せに満ち泣きました。惜しむ別れなどありません。全ての想い出を愛しく抱いて青い毒池に戻るだけです。
青池が冷えていきます。伴って霧が晴れていきます。雨は降り続いていますが勢いは弱くなりました。白龍様にお願いした新しい溜池に魚たちはうつりました。動物達もこの先は訪れることも無くなるでしょう。白龍様は弱く幼い神様の欠片ではありませんから加護の湯も必要ありません。村には立派なお社もあります。一晩中嵐の空を爛々と睨んでいた白龍様は夜明けとともに里へおりていかれたのでしょう。不思議と穏やかな凪いだ心地でした。
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