生と性

Prologue

　法律の中でもとりわけ物議を醸したのが、このシステム。

『パートナー交換システム』
　セックスレスに悩む夫婦を救済するためのシステムで、セックスレスに悩む夫婦の一方が、申請により、同じセックスレスに悩む相手との性交渉を持ってよいこととされる。これには担当庁への申請が必要で、審査ののち承認を受けた者だけが利用できるものである。

　あくまで夫婦の一方又は双方にセックスレスに問題がある場合に、その相手方の救済のために利用できる制度である。
　不倫や、不特定多数との恋愛及び性行為の隠れ蓑として使えるものではない。

「夫(妻)以外の相手と性行為するなんて」
「法律や倫理に反するのでは」
などと反発も大きかった。

「結婚したら不倫や浮気をしてはいけない」

　それは至極当然の意見・感情であるが、それならば何故セックスレスという問題に悩む人は減らないのか。

　生涯の伴侶と決めた相手との性行為を、相手に望んでも受け入れられないならば。
　その遣り切れない感情はどこに向かえばよいのか。他所で満たすことも許されないのに。

　正論の息苦しさに押し潰されそうになっている、声を上げられぬ被害者に救済を、ということでこの制度が正式に運用開始することとなった。