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7
ふと見上げた空は微かに茜色に染まりだしていた。
ダッシュ訓練をした後、フィールドに出て薬草採取を兼ねたモンスター狩りをしていたら、つい時間を忘れて夢中になっていたらしい。
「そろそろリアルで四時間たつよ」
「あー本当だ。一回ログアウトしなきゃね。後でまた一緒にやろうね」
「うん。――じゃあ、宿をとって……」
通りすがりのプレイヤー達の会話に、私も採取をやめて立ち上がった。
ここ、《 World 》の中では、現実の二倍の長さで時間が流れている。プレイ開始が九時だったので、確かにそろそろログアウトしないといけない時間だ。VR規制で四時間以上の連続稼動を禁止しているからである。
私も、強制ログアウトされる前に街に帰って、宿をとることにしよう。
街につく頃には、空はだいぶ赤く染まっていた。
ダンデリードのリポップ(再出現)を待つ間に行った採取が予想以上の収穫だったので、足取り軽く門を潜り抜ける。同じように帰ってくるプレイヤーで、大通りは賑やかだ。
――三時間の休憩をはさんで、またログインしたら、今度は調合を試そうかな。生産や作業的な地味なプレイも楽しい。採取で手に入れたあれを使えるなら、ソロプレイが楽になるだろうし……。
再ログインしたら何をしようかと考えながら、私は人混みを避けて細い脇道に進んだ。 夕闇せまる街並みを、一人のんびりと歩く。
《白の都》は乳白色の建物と赤煉瓦の石畳で作られた街だ。
夕日に照らされた白の壁は、赤い光線を四方に反射して陽炎のように揺らめかせ、赤い石畳が燃えるような深い色へと変わる。赤に揺らめく小道の中にいると、炎の底を歩いているような錯覚をおこす。
夕焼けのこの街は、まるで《紅の都》といった風情だった。
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