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βテスト開始から数日がたち、私は夏期休暇を活用してソロプレイを満喫していた。 「お姉ちゃん、新しいゲームはどう?」  朝食の片付けをしていると、今日も朝から部活らしい奈緒が尋ねてきた。毎日暑いのに、頑張ってるなあと感心してしまう。  この炎天下で陸上なんて、私には無理。きっと溶ける。人体構造上不可能でも、気持ち的には。 「うーん。そうだね、楽しいよ。でも、近くに他の人プレイヤーがいるとやっぱり緊張しちゃうかな」 「お姉ちゃん……」  何か言いたげな声に目を向けると、奈緒は可愛いと評判の顔に、困ったような悩んでるような複雑な表情を浮かべていた。  そんな顔をしていても可愛いのは、雰囲気に華があるからだと思う。顔の造りは似てる筈なのに私は地味で目立たないしね。いや、その方がいいんだけど。  なんて考えていると、奈緒が言葉を選びながら話しだした。 「人見知りのお姉ちゃんが、オンラインをプレイするなんて頑張ってるよね。でも、ほら。せっかくのオンラインなんだから、もっとこう、オンラインらしく遊んでみたらどうかな?」 「オンラインらしく……」「そう、オンラインらしく!」  熱意の籠もった眼差しを向けられる。うーん。オンラインらしく……。 「そうだよね、せっかくだしね」 「うん、そうだよお姉ちゃん!」 「オンラインならではを楽しまないとね」 「うんうん!」 「でも流石に、トップランカーを目指すのは無理かな」 「いやいや、目指すならトップだよ。って、ちっがーう!」  うんうん、と頷いていた奈緒は握りしめた両手を上下に振って否定する。  見事なノリツッコミをありがとう。でもね。 「奈緒? 時間わかってる?」 「え? あーっ!?」  遅刻ー! と叫んで奈緒はダッシュで出掛けていった。流石陸上部、私のキャラに教えて欲しい走りだ。 それを見送って、私はぽつりと呟く。 「オンラインらしく、かあ……」  奈緒が言いたいことは、わかっていたけど……うーん……。  奈緒の言葉を胸のうちで転がしながら、私は家事をすませて《 World 》の世界へとダイブした。
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