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「あ、お姉ちゃんゲーム終わったの?」
私が水を飲もうとして部屋を出ると、ちょうど階段を上がってきた奈緒が尋ねてきた。
「うん。これでβテストも終了だよ」
「そっか、お疲れ様」
微笑みながら労いを口にした奈緒は、それで、と続ける。
「お姉ちゃんは、なんのクラスに就いたの?」
「……え、と」
「やっぱり無難に短剣使い、とか?」
無邪気に追及してくる奈緒から私はそっと目を逸らした。言えない。あなたの姉は何故か首狩り暗殺者なんて物騒な職業に就いてしまいました、なんて言いたくない……。
どう誤魔化そうかと悩んでいると、奈緒は首をかしげて笑った。
「まあ、今すぐ聞かなくてもいいか。どうせわかるしね。それより、お姉ちゃん」
「な、なに?」
「今更聞くまでもないとは思うけど……初めてのオンラインはどうだった?」
私はゆっくりと目を瞬いた。奈緒はまるで答えがわかっているかのように楽しげに笑みを浮かべている。
つられるように笑顔になりながら、私は口を開く。
初めてのオンラインがどうだったか、それは。
「もちろん、楽しかったよ」
たくさんの思い出を一言に詰め込んで、私はそう答えたのだった。
fin
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