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14
――《審判》によって勝敗が告げられ、ランカー同士の決闘は終わった。
決着がついた証のように透明なバリアフィールドが砕け、キラキラと光りながら消滅していく。
それと同時に、《審判》は出てきた時と同じく、マンホールのような影に足元から呑まれて消え去った。出てくる時も、帰る時も、なんだかまがまがしいな。
なんとなくそれを見ていた私の耳に、与一さんとマリアロッテくん、二人の鮮やかな闘いぶりに感心する声が拍手と共に聞こえてきた。
「やっぱ、ランカーになるだけあって強ぇなー」
「だなー。さ、賭け金払ってくれよ」
「よーし、俺も頑張るぞー」
「賭け金」
「いっちょ《塔》にでも行くかー」
「……お前の部屋行ってroonちゃんのF・Hファンサービスホログラフを売り払ってくるか」
「すんません! それだけはご勘弁を!!」
……うーん、まあ、約束は守るべきものだよね。悲痛な叫び声の主に少し同情しながらも、私は深く頷いた。
母が、賭け事は『乗るなら払う、払うのが嫌なら乗るな!』と言っていたよ。
私の父は運が無いのに賭けに乗っちゃうタイプで、よく母に殴られてました。今は、お小遣いの範囲内なら許されているらしい。
――閑話休題それはともかく
まるでゲームの宣伝ムービーを見た気分で周囲のプレイヤーと共に両手を打ち合わせていると、注目の二人が歩きはじめた。……こちらへと。
……やばい。
私は浮かべていた笑顔を固く引きつらせた。闘いの凄さにすっかり忘れていたけど、そういえばこの勝負の原因は私だったような……!
「い、いやいや。本当に当たりそうだったのは私じゃなくてエルフ君だし!」
はっと思い出して横を向いた私は、そこで再び固まった。
既視感デジャブとはまさに今この状況を指すのだろう。
――白髪エルフ君は、姿を消していました。
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