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「――えっと? βテストのご案内? なにこれ」  中に入っていた紙には、新作MMORPGのテスターに私が受かったと書いてあった。抽選? そんなの出したっけ?  よく読んでみると、私が出した別ゲームの抽選に外れて、このテスターに回されたらしい。 「そんなことってあるの? だって、その新作って今話題になってるやつだよね?」  奈緒が不思議がるのも当然だ。かなり大手の会社だし、新作ゲームの評判も高い。テスターになりたい者は多いだろう。 「うん、それについても説明されてる。今回の新作は、幅広い客層を狙ってるみたいで、オンライン初めて、のテスターが欲しいみたい」  応募した時、オンラインはプレイした事がないって質問欄にチェックつけたからなー。きっとあれでだな。 「でも、オンラインかー」 「やらないの?」 「オンラインはねー……」  私はひらひらと紙を振り、顔を顰める。ゲームは好きだが、オンラインは苦手だ。  人見知りということも関係しているが、それ以外にも、色々難しくて敷居が高く感じられる。 「ステ振りとか、効率とか、よくわかんないし。プレイヤー(他の人)がいっぱいなんて緊張するし。なんか気楽にできなさそうで、ちょっとね……」  興味はあるのだが、手を出しづらい。 「うーん。確かに、対人関係とかは気を遣ったりするけど。でも、慣れたら楽しいよ?」  システムとかも慣れたらだんだん分かってくるし、と奈緒。奈緒の方はオンラインを中心にプレイしていて、幾度となくオンラインに誘われている。 「オフも楽しいけど、オンラインにしかない楽しさもあるよ?」 「……それは、そうだと思うけど」 「お姉ちゃんと一緒にゲームしたいし、せっかくだからやってみない?」 「うーん……」  なんだか今日はえらく押してくるなあ。  返答を避けるために、私は別の話題を口にした。 「それよりさ。今日は随分のんびりしてるけど、朝練は無いの?」 「――え?」  きょとん、とした奈緒の表情が、時計を見て凍り付く。 「ち、遅刻――っ!?」  あ、やっぱりあるんだ。――もっと早く言ってあげるべきだったかな?  慌しく出掛けて行った妹を見送ると、私は茶碗洗いや掃除、洗濯を済ませて部屋に戻った。手には、例の封筒。――まあ、どんなゲームかくらいは調べてみてもいいかな。  手紙に記されている公式ホームページのアドレスを眺めて、そう思った。
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