わたしのこと

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3年5組。 国公立大学に行きたい子が集まるクラスに私はいる。 そして私の今の席はちょっとすごい。 カースト上位女子に囲まれている。 席替えで一番後ろの端になった私。 カースト上位の女たちに揉まれる生活はなかなかスリルがあって楽しい。 いろんな意味で。 「じゃ、今から絵しりとりしよ」 前の席の小倉ちゃん。 なぜか彼女は苗字で呼ばれている。 そして学年一の美人だ。 後ろの席になって分かったことは、彼女はモデルになってもおかしくないほど顔が小さく毛穴もないということ。 どこまでも裏切らない。 「いーね!ユカ、なんか紙用意して」 隣の席のラン。 ランは誰に対しても平等で、私も彼女とはとても話しやすい。 話もうまいため、いつも人に囲まれているイメージがある。 そして、ランに言われて裏が白いプリントを探している、斜め前の席のユカちゃん。 元運動部でよくいじられている。 思わず構いたくなるのも分かる絶妙な愛嬌があった。 …私は苦手だけど。 3人をぼーっと見ていたら、 「夏目ちゃんもやるんだからね」 とユカちゃんに言われた。 微妙に気まずい。 でもここで知らないふりをされて周りで盛り上がられたら私は死ぬ。 声をかけてくれたユカちゃんに軽く返事をしながら心の中は複雑だった。 感謝7割、ほっとした気持ちが2割。 残りの1割はほんの少しの罪悪感というか、いたたまれなさ。 気を使ってくれたのは丸わかりだが、彼女たちは決して私を馬鹿にしない。 そういうところが嫌いではなかった。 本物のカースト上位は私たち庶民を見下したりしない。余裕があるのだ。 それにいったん遊びがはじまってしまえばどうでもよくなる。 高校三年生の一学期。 大切な時期なのに授業中に絵しりとりで盛り上がる私たち。 でも何も目立つことはない。 私のクラスは他のどのクラスよりも授業中うるさいことで有名だった。 何せこのクラスの大半が学年でいろいろな意味で有名な子ばかりなのだ。 国公立クラスは2つあるけど、何故か私のクラスに集まってしまった。 反対にもう一つのクラスは静かな子ばかり。 はじめは絶望した。 だけど、勉強漬けの毎日で、この五月蠅さがちょうどよいことにすぐ気が付いた。
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