わたしのこと

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「はい」 小倉ちゃんに紙を渡してもらう。 …恐ろしく絵が下手だった。 何が書いてあるのか全く分からない。 でも他の子のように気軽に彼女に話しかけることはできなかった。 いい子なのは分かるが、庶民から抜け出したことのない私にとってはどうしても怖い。 後で考えよう、と思い紙を横にずらした時だった。 「…おい」 バッと周りの三人が顔を上げた。 それどころか今の声で教室中が水を打ったように静まり返った。 ヤバい。 私はうつむいた。 「お前ら何やってる?」 「はやかわ~見逃してよ~」 さすがというか、小倉ちゃんが軽口をたたいた。 そんな彼女に少し救われる。 私たちの担任、早川。 彼は信じられないほど生徒に舐められている。 だけど同じくらい生徒から信頼されている。 「こんなのやってる暇あるくらいお前ら余裕なんだよな?」 私の机にある紙を指で摘まみ上げた。 ああ…終わったな…。 「4人とも前出て黒板に今やってるところの古語の意味全部かいとけ」 え!そんなんでいいの!?と3人が勢いよく席を立った。 あわてて椅子をひく。 早川がため息をついたのが聞こえた。 私はそれだけで怯えてしまう。 今のでただでさえ目立ってしまったのに遅れをとるわけにはいかない。 不自然でない程度にあとを追いかける。 3人が全く臆していない様子をみてクラスの空気が動き出した。 黒板に字を書きながら安堵した。 私はいつも人の目線を気にしてしまう。 彼女たちが輝いてみえた。 高校生は無敵だ。
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