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あれから数年後、山道を走る車内に私はいた。
カメラを握りしめて、車を走らせる母を横目に到着を待つ。
「まさか、お父さんのとっておきがこの山から見える星なんて夢にも思わなかったわ」
「えっ、お母さん知ってるの?」
「一度だけ、お父さんと来たことあるのよ。その時に結婚のプロポーズされちゃって」
「……もしかしてその時の思い出も含めて、星が綺麗とか思ったのかな」
「そんな事ないわ。本当に、ここの星は綺麗よ」
陽も完璧に沈み、徐々に星が見え始める。
母は車を止めると、空を見るよう促された。
私は窓を開け、冷気が顔を撫でるのを感じながら空を見上げる。
「うわっ、すごっ……」
まだ全体を見れていないのに、既に街で見える星とは全く違う物が見えていた。
カメラを握りしめ、期待に胸を脹らませる。
「お父さん、教えてくれてありがとう」
この空のどこかに父がいる事を信じて、私は空にカメラを向けた。
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