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生憎の大雨は、今の私の心中を現している様だった。
葬式会場の前で、なかなか会場に入れず雨に打たれるのもお構いなしに立ち竦んでいる。
いつか来るとはわかっていても、この現実はツラく耐え難い。
死を受け入れられない、現実を受け入れたくない。
だって父に最期に遺した言葉が、【嫌い】の言葉だから。
「マユ、風邪ひくわよ」
不意に雨が、傘で遮られた。
涙か雨かわからない状態まで濡れた顔を、その傘の持ち主に向ける。
「お母さん……」
「お父さんの顔見て、ちゃんと見送ってあげなさい」
嫌だよ、その言葉すら出ない。
今の私なんて、お父さんに会う資格すらない。
私なんて……
「お父さん、最期の日に言ってたわよ」
母の言葉が、耳に届く。
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