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父が眠る棺桶の中、久々にちゃんと顔を見て私は涙が止まらなくなった。
我儘を言った日よりも、大っ嫌いだと叫んだ日よりも、この父の顔は安らかな顔だった。
闘病生活でどれだけ苦しいのか私にはわからなかったけど、この父の表情が物語っている。
「私、ずっと……ごめんなさいが……言えなくて……」
母の手が背中を撫でてくれる。
悲しみに夢中になる私を、少しずつ落ち着けてくれる。
その温もりの中に、父を感じた。
我儘を言う私の背中を撫でる、父の手の温もりを。
私は、心のどこかで思い出していた。
「お父さん……嫌いなんかじゃないよ……お父さんも、星も……ずっと大好きだよ……」
胸の中で錆びついていた言葉が、ようやく吐き出せた。
生きているうちに、この言葉を聞かせてあげたかった。
ごめんなさい、この言葉が父に届きますように。
そう願った瞬間、外の雨が止んだらしい。
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