6人が本棚に入れています
本棚に追加
自分で始めた過ちには、自分で決着をつけないといけない。
「お話ってなあに? おとーさん」
「……着いてから話すよ」
人目を避けて路地ばかり選んで歩いていたら時間がかかってしまった。血まみれのままの少女を連れて、ロイドはもう随分長い間夜道を進んでいた。
やがて街の端までやってきて、ようやくロイドは少女の方を振り返る。
ロイドが何か言う前に、少女はどこか怯えるように先に口を開いた。
「……わたし、ホントは分かるよ。おとーさんが話そうとしてること」
「………」
「おとーさん……わたしのこと、殺せって言われたんでしょ?」
驚いた。どうしてそうだと思ったのだろう。珍しく、少女はロイドの前だというのに笑っていなかった。
「どうして……」
「分かるよ。だって、わたしきっと間違ってる。シニガミって、おかしいってことでしょ? やっぱり、わたし生きようとしちゃ、ダメだったんだよね」
「違う。……お前は、殺し過ぎたんだよ。だから──」
「おとーさんは……わたしのこと、嫌い? 前の時も、わたしおとーさんと暮らせたらそれでよかったのに……。おとーさんは、わたしのこと捨てたの?」
「捨てたわけじゃない……。ただ……」
救いたかっただけ。そんな言葉を自然と選ぼうとしたことで、ようやくロイドは自分のことが分かった気がした。救いたいなんて、なんて勝手で傲慢な言葉だろう。自分はただ、人を不幸にしてきただけの人間なのに。
ロイドが思わず黙りこくると、少女は静かに、腰に下げていた柄から先ほどの血まみれのナイフを引き抜いた。
最初のコメントを投稿しよう!