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「……俺を殺すのか?」
「おとーさんは、わたしを殺すんでしょ? 殺せなかったら、おとーさん殺されちゃうんでしょ? なら、どっちかが死ぬしかないよ」
出会った時と同じ人形みたいな目で、ユラリと、少女はナイフを持ち上げる。
「おとーさんのせいだよ」
「そう、だな……」
こうなったのも、全部ロイドが選択を間違い続けたせいだ。
殺し続けて生きてきた自分を思って、生きるために殺した少女の事を思う。間違えたのは、どっちだっただろう。人形だったのはどっちだろう。
生きるべきなのは、どっちだろうか。
「わたし、死にたくないよ。ただずっと、死にたくなかっただけ……」
「でもね──」出会ったときとも違う、幸せそうな笑顔で少女は笑う。
「あんなに優しくしてくれたのは、おとーさんが初めてだった……。間違ってるかもしれないけど。きっと、こんなのおかしいけど。おとーさんと出会って、わたし──初めて生きたいと思えたの」
そう言って、少女はナイフを自分の方に向けた。
「な、に、してる」
「ごめん。やっぱりわたし、おとーさんに殺されるのは、いやだな」
「待て……!」
手を伸ばす。ロイドの手が少女に届く直前に、少女はナイフを自分の胸に突き刺した。
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