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これまで何度もピンチを乗り越えてきた。
ここ北京での衝突事故。二度とスケートが出来ないのではないかと絶望したけれど、そこからの復活。何度も世界最高点を塗り替えた。
2017年の大逆転劇。
足の怪我で出場自体が危ぶまれたけれど、平昌五輪で二度目の金メダル。
そして……そして、今日。
このフリーを持って引退すると、つい先ほど、発表したのだ。
今日こそ4Aを降りてくれると、全人類が今まさにテレビの前で固唾を飲んで見守っているだろう。
フリーの構成はこうだ。
4A、4Lo、3F、4S‐3T、4T‐1eu‐3S、3A‐2T
俺はこれまで4Aを、試合で成功させたことがない。あとわずかで回転が足りなかったり、ステッピングアウトだったり。
オーサーは、銅メダル狙いで無難にまとめろと言った。だが羽生結弦が銅なんかで満足するものか。
これが、最後の試合なのだ。4Aを跳ぶチャンスはもう、この一度しかないのだ。
4Aを跳んで、金メダルを獲るのだ。
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