手紙の帰り道

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 出てきた封筒は随分と古いものだった。  裏を見てみると暗号めいたものが書かれていた。  A→Z  イニシャルか。AさんからZさんへって感じかな。  まあ大方、さっき図書委員が言っていたような恋仲の生徒たちが、手紙は書きたいけど見つかった時に特定されるのが恥ずかしくて自分たちにだけ分かるようにこう書いたんだろう。  学校の中でも人の寄り付かない図書館の、さらに人の寄り付かない歴史書コーナーの棚。  しかも特定されないようにイニシャル。場所と封筒の文字だけでも隠したいって分かるな。    あまり物事に関心がない私でもさすがに少し興味がわいてきた。  ここまできたら中身が見たくなってしまうのもしょうがない。  そう、しょうがないこと。   私は周りに誰もいないことを確認してから封筒から手紙を出した。  手紙は丁寧に半分に折られていた。  恐る恐る開く。 「……え」  中にはまたまた暗号のような数字の羅列、それと日付。  暗号に関してはもともと手が込んでいた手紙なので別に驚きはない。  けれども日付の方に関しては驚きが隠せなかった。  書いてあった日付は二〇〇八年三月一六日。  今から十年以上前の日付だった。    どうやら私は夏休みの図書室で、十年も前の過去からの手紙を受け取ってしまったらしい。
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