手紙の帰り道

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 外はもうすぐ日暮れ。  私は少し早めの夕ご飯を食べ終え部屋にいた。  興味がわいて持ち帰ってきてしまった手紙を睨みながらベッドに寝転がる。  手紙に書いてあった数字の羅列は十一個とあまり多くはない。  9, 12, 15, 22, 5, 25, 15, 21,20,15,15 の十一個だ。  これに関しては今のところ解読の糸口すらつかめない。  あとはこの日付くらいしか手掛かりになりそうなものはないな。  二〇〇八年の部分からは何も分からない、注目するとすればこの三月一六日の部分だろう。 「三月一六日、三月一六日……」  三月って言ったら卒業くらいしか思いつかないし……そうか、卒業か。三月といえば卒業シーズンじゃないか。  十年前の三月一六日が卒業式の日だったかはわからないけど、それも明日教師にでも聞いてみればいい話だ。  もしかしたら卒業には関係のない当時の在校生が手紙を挟んだだけという可能性もあるけれど、そうじゃない可能性だって十分にある。  もしそうだとすれば図書室にある卒業アルバムを見ればAとZのイニシャルの人が載ってるかもしれない。そのイニシャルが何人もいたら振り出しに戻るかもしれないけど、それでも一歩前進した感じがする。  今日は早めに寝て、明日早く学校に行こう。  次の日、目を覚ましたのはお昼の十一時頃だった。  そしてその日その時間は、自分の決心の脆弱さを改めて実感した瞬間でもあった。 「……はあ」  午後十二時過ぎ、私はため息をつきながら自転車を走らせ学校へと向かっていた。 「どうしたんだブンコ、こんな天気のいい日にため息なんてついて」 「いつも言ってるけど、私の名前はアヤコなんだけど」  そう、今日は昨日と同じくらい暑く、それだけでも憂鬱だというのに、学校近くの交差点で北条と会ってしまった。  爽やかな短髪で、日に焼けた肌が学校指定の白いシャツに良く似合う男の名前は北条慎太郎、針洲高校に通う二年生で私の数少ない中学からの友人の一人なのだが、サッカー部で活発な北条はなんというか、エネルギッシュで相手をしていてたまに疲れる――時もあったりなかったりする。  本屋の手伝いをさせる以外にわざわざ会ったりはしない。この暑い日なんかは特に。  心なしか昨日より暑くて汗が出る気がする。 「そういえばお前はなんで学校に行こうとしてるんだ? 夏休みに家から出るなんてお前らしくもない」  失礼だなこの男、私だって外に出たりはする。現に昨日だって学校に行ったし。 「そういう北条はなんで学校に? この暑い中、夏休みなのに」 「ああ、俺はこれから部活なんだよ」  エナメル製で大きめの肩掛けバッグをポンと叩いて続けた。 「それで、そっちは?」 「私は――」  私は北条に昨日図書室で手紙を見つけたことやその手紙が十年前のものだったこと、そしてこれから図書室に卒業アルバムを見に行くことなどの流れを簡単に説明した。
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