手紙の帰り道

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 図書室に向かう途中で歴史教諭の座間先生にあった。会話をしてみると、どうやら夏休み明けに抜き打ちテストを予定していてその問題作りのために学校に来ていたらしい。  やっぱりするんだな、抜き打ちテスト。教えてくれたら抜き打ちにはならないと思うのだが、それを言うと「夏休みでも学校に来て勉強している生徒には伝えてますし、家にいる生徒はしっかり勉強しているはずですからね」といたずらっ子のような笑顔を見せた。  二十九歳と結構若いはずなのに、もう生徒をいじめるのが趣味なんじゃないかなと思うくらいにはこの人の抜き打ちテストを受けている。  抜き打ちテストを沢山する先生なんて、生徒からすればまったく勘弁してほしい相手だ。  そうだ、今日は先生方からも確認を取ろうと思ってたんだ。 「先生、突然こんなことを聞くのもなんですが、二〇〇八年の卒業式は三月一六日でしたか?」 「……うん、確かそうだった気がするよ」   なるほど、これで一応教師陣からの確認も取れた。  日付が卒業式の当日の手紙。これはその日に卒業する生徒が出したと考えるのが妥当だろう。違うとしたらわざわざ前後数日が休みの卒業式の日に手紙を出す理由が思いつかない。  仮説として、この手紙は卒業する生徒がある生徒――この生徒もまた同じ学年で、さらに元から手紙のやり取りをしていた相手――に送ったものと考えるのが自然だ。でなければこんな暗号めいた手紙、そうそうわからない。  だったらあとは図書室の卒業アルバムを見ればわかるだろう。 「ありがとうございました」  先生に挨拶をして、図書室へと向かった。
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