4人目の父親

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 父はソファに沈んだまま微動だにしなかった。  この人はとことん隠し事が下手だ。言外に帰った来ないかもと言われただけでこの様子では、私でなくとも察せるものがあるというもの。  海外に行くっていったって、ネットは繋がってるし電話もできる。会いに行けない場所でもないのに。 「そんなに離れるのが嫌なの」  思わず声に出た言葉に他ならない私がびっくりした。はっとした父の目がこちらを向いてどきりとするが、出てしまったものはもう取り消せない。 「ちゃんと言えばいいじゃん」  父は青い顔で「ちがう」と首を振るが、私が「違うの?」と尋ねると途端に黙り込んでしまう。咄嗟に嘘もつけないなんて生きづらい人だ。 「那由多さんも同じ気持ちなんじゃないの」 「……まさか」 「訊いてみないとわかんないよ」  私は強い口調で言い募った。  するとたじろぎながらも「でも、俺には……」と最後の足掻きを見せるので、 「私を言い訳にしないで」  とぴしゃりと言い放つ。  悔しそうに唇を噛む父の顔には悲壮が滲んでいる。それでも「俺は、そういうのはいいから」と顔を背けて黙り込んでしまう彼に、どうしようもなく腹が立った。 「いくじなし」  震える声で言い捨ててリビングを飛び出した。駆け足で自分の部屋のベッドに飛び込むや、耳を塞いで体を丸める。お風呂に入ってない事に気づいたが、とてもそんな気分じゃない。明日の朝、シャワーを浴びればいい。  明日の朝、シャワーを浴びて。  それから。
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