4人目の父親

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   翌朝。  駅のバス停で座っている私を見て、白い息を吐きながらやってきた那由多さんは驚いた顔をした。  彼は出立の時刻を告げなかったし、私も聞かなかったのだから無理もない。彼の性格上、1番早いバスに乗るだろうと思ったのだ。 「雪音ちゃん、もしかしてずっと待ってたの?」  私の真っ赤な鼻を見て彼は痛ましそうに眦を下げて、長い指が私の頬に触れる。本当は1時間も前からここに居たけど、言いたいことはそれじゃないから「さあ」と首を小さく振ってそれを避けた。 「見送りくらい、ちゃんとしたいし」  そういうと、那由多さんは嬉しそうに、それでいて少し悲しげな笑みを浮かべる。 「ご飯はしっかりしたのを食べてね」 「まず言うことがそれなの?」 「……アメリカの食べ物って体に悪そうだし」 「それは偏見だよ」 「病気にも気をつけて欲しいし、怪我もしないで欲しい」  うん、うんと優しい相槌を聴きながら、私はコートの裾をぎゅっと握った。緊張で手のひらがじんわりと湿っている。 「ちゃんと帰って来て」  絞り出した声に返事は返ってこなかった。けれども構わずに言葉を続ける。1度顔色を窺ってしまえば、2度と口を開けない気がした。 「お父さんの事、諦めないで」  自然と嗚咽に似たひきつけを起こす喉元をぎゅっと押さえる。 「……それと、本当にできればでいいんだけど、邪魔だったら18歳になったらいなくなるし……でも本当に那由多さんさえよければ、なんだけど」  少しだけ息を吸って、最後のお願いを口にする。 「私の…………私の、もう1人のお父さんになって」
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