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「次、腹筋」
「あー」
美咲のその声に、遼一は絞った声を出した。
「いきますよー。はい、いち、に」
美咲の声に合わせて、部員が腹筋を始めた。
「和喜、しんどい」
40回を数えたとき、遼一がつらそうな声で俺に声をかけてきた。。
遼一の足をおさえている俺は、それに「頑張れよ」と嫌味ったらしく声をかけた。
数字が数えられるたびに、遼一が自分の方に向かって起き上がってくる。
おさえている足は、硬く、筋肉質だ。
吐く息が、俺の目の前で拡散していく。
ああ、かっこいい。
遼一が好きだった。俺がそのことに気が付いたのは、もうずいぶん前のことだったが、これほどまでに強い気持ちを抱くようになったのは、ほんの最近のことであった。
俺と遼一は同じ学校で水泳部に所属している。高校2年生。今は梅雨の時期だから、プールを離れ、校内で筋トレにいそしんでいた。
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