キャンセル

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無かった事にしたい時、役に立つキャンセルボタン。 それは、パソコンで打ち間違えた時。プライベートなことをSNSに上げそうになった時。浮気相手に送るつもりのメールを、上司に送りそうになった時。行きたくないデートに誘われた時。 「おっと、しまった」 を全てクリアにするボタン。跡形もなく、美しく汚したくなる白紙へと、あっという間に戻す。言葉、約束、縁、人、どれであっても情なくゴミにする。 白紙に戻ったその裏に、捨てられたゴミ達が黒く渦巻いていることも知らずに、キャンセルボタンは、無かったことにする。瞬く間に黒に飲まれたキャンセルされた者たちは、思い出されることも利用されることも決してない。完璧な美しさには、汚れなど要らないのだから。 しかし、無駄に産み出され忘れられたキャンセル達は、白紙の裏側で必要とされる時をじっと待っている。白紙の裏で、ずっと様子を伺い待っている。
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