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広い広い海の中心。 そこに停泊すれば、ダイヤモンドやルビー、サファイアなんかの宝石が一夜のうちに、好きなだけ手に入るという噂があった。 噂だから誰も信じない。 しかし、ある港町の若者は噂を信じて一人船を出した。 若者は、一年後に財宝を手にして帰ってきた。 若者いわく。 無風の満月の夜。食料も底を尽きそうで動けずに途方に暮れていたら、美しい人魚が現れ追いかけたらある島に辿り着いたという。その島は、たわわに実った果実がそこら中の木にぶら下がり、砂浜を少し掘れば財宝が湧き出る島に着いたらしい。 その話を信じた若者が何人か船を出した。 若者たちは、やっぱり一年後に帰ってきた。 若者たちいわく。 やっぱり無風の満月の夜。人魚が現れ追いかけると島を見つけた。 確かにたわわに実った果実はあった。財宝も出たという。 ただ、果実はそこら中の木に実っているわけではなく、財宝も思っていたより掘らなければならなかったという。 手にした財宝は、一人目の若者よりは少なかったが、充分過ぎるほどの量を持ち帰っていた。 充分に話を信じた港町の住民は、こぞって船を出した。 数年後、半分ほどの住民が息も絶え絶えの状態で帰ってきた。 彼らは、若者たちを嘘つき呼ばわりした。 確かに人魚にはあったが、島に充分な果実などなく、財宝も砂浜を何日もかけて掘ってやっと出てきたという。 残り半分の行方は分からない。 港町は、財宝を充分に持ち帰った若者たちのものになっていた。
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