パンドーロ

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パンドーロ

キラキラ輝くお星さま。 パンドーロはまさに一番星だ。 形も、色も、ふりかかった粉砂糖も、キラリと輝いている。 黄金のパンと言われるだけあって、切り分けたパンドーロは金色に光る。 卵もバターも砂糖も、ふんだんに使った甘さは、かつて宮廷で出されていたと言われると納得してしまう。 かつてのお姫様も大好きだっただろう。 現代の私だって、これを食べるのを心待ちにして一年を過ごすのだから。 金色に輝くパンドーロは、いつだってクリスマスを豊かにする。 そして今年のクリスマスは、どの年のクリスマスよりも特別なものになった。 部屋の窓際で遠くの星を眺めていると、客室乗務員が入ってきた。 3時のおやつと言ってワゴンからパンドーロを取り出した。 窓際のテーブルに用意をしてもらい、ウットリと背景とパンドーロを眺める。 窓の下側には、ちょうど地球が青く光っていた。 宇宙船から地球を覗きながら、パンドーロを啄む。 おとぎ話でも、歴史上のお姫様も、地球を配下にしながらパンドーロを食べたことなんてないだろう。 そう思うと歴史上のどんなお姫様よりも、高貴な存在になった気がした。 パンドーロは、天使が食べる金のパンに由来したという話もある。 天使にでもなった気分で地球を眺める。 しっとりと溶けてゆくパンドーロに目を細める。 友人とのポーカーゲームに勝たせてくれた神に感謝する。 二人で出し合った宇宙船の旅。 ポーカーで勝負をして買ったほうが楽しんでくる。 恨みっこなしの真剣勝負。 SF好きの私達の譲れない戦いで、負けて涙した友人と抱き合って別れた。 お土産に地球の写真と動画を約束して。 私はスマホを取り出して、食べかけのパンドーロを写真に納めた。 暗い宇宙空間の中に青く光る地球と黄金のパンドーロ。 なかなか良い写真だと満足しながら、友人へのクリスマスプレゼントを一枚、また一枚と貯めていく。
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