10年前の君へ.txt

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10年前の君へ.txt

2c761dc3-0674-46f3-a770-fcffa65fae92 時雄は10年前の自分に宛てたテキストファイルを開いた。 「10年前の君へ 大丈夫、君の病気は良くなる。 そして、君はその病気をきっかけに創作活動を始める。 そうだ、病気をしたことが創作の源泉になるんだ。 だから今の君の進む道は間違っていない。 君の苦しみは10年後、人の喜びになるんだ。 だから安心して欲しい。」 時雄はキーボードから手を離した。 そして、誰に読まれるわけでもないテキストファイルを閉じた。 ファイルを右クリックし「10年前の君へ.txt」と名前をつける。 「誰に読まれるわけでもない」時雄はそう呟き、 今作ったばかりのテキストファイルをゴミ箱に捨てた。 ゴミ箱のアイコンがドキュメントで埋まる。 それは思いつきだった。 時雄はもう用の無いゴミ箱を開いた。 すると、一つしかないはずのファイルが二つになっていた。 よく見るともう一つのファイル名は「10年後のあなたへ.txt」となっている。 こんなファイルを作った覚えはない。 一体どこから入り込んだんだ。 時雄は不思議に思い、いつの間にか増えたファイルを開いた。 中にはこう書いてあった。 「あなたは誰ですか?どうして僕の病気を知っているのですか?でも、あなたの言葉はとても励みになりました。これから安心して病気と闘おうと思います。創作活動ですか?とても興味があります。あなたの言う通り、病気がよくなったらペンを執ってみようと思います。ありがとうございました」 これは一体? まるで10年前の自分からの手紙のようだった。 時雄はゴミ箱に二つ並んだファイルを眺めた。 こんなことがあるなんて。 時雄はふと横を見た。 そこには新たにもう一つファイルが出来ていた。 ファイル名は「1000年前の君へ.txt」 時雄はファイルを開いた。 中にはこう書いてあった。 「1000年前の君へ 大丈夫、君が今書いている闘病記は医療に大きな進展をもたらします。 そして、君はその闘病記をきっかけに一躍時の人となります。 そうです、闘病記を書いたことが医療の進展に繋がるのです。 そこから人の寿命は一気に4000年に延びます。 だから、今の君の進む道は間違っていません。 君の闘病記は1000年後、人の喜びになります。 だから、安心して欲しい。」 時雄は驚き、新たなテキストファイルを作った。 「1000年後のあなたへ.txt」とファイル名をつけ、文章を綴る。 そして「1000年後のあなたへ.txt」をゴミ箱に捨てた。
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