ハルキと狼の友人

3/7
前へ
/215ページ
次へ
 ひと眠りして、朝昼兼用で飯を食べた後。夜の相手と別れた俺は、紹介されたマッサージサロンに来てみた。 『マッサージサロン・にくきゅうの癒し』  ネーミングだけ見ると如何わしい店を想像しちまうけど、中に入るとそんな風じゃなかった。  エントランスは診療所の待合室みたいだ。正面の受付には人間が一人立っていて、木製カウンターには綺麗な花が飾ってある。オルゴールのBGMが心地好く耳に入ってきて、爽やかなアロマの香りもふと感じた。  受付へ進むと、ケーシーっていう半袖の白衣を着た男が柔らかいトーンで話し掛けてきた。 「こんにちは、サロンには初めてお越しですか?」 「そうだけど」  俺の返事の後、受付はクリップボードに挟んだ白紙の問診票を差し出してきた。 「それでは初めての方にはこちらを記入して頂きます。この後カウンセリングルームに案内しますね」 「わかった」  ペンを貸してもらって名前や年齢、どこが悪いか等を細かくチェックして問診票を埋めていく。  その間、妙に受付の視線が気になったが、書き終わると何も触れずに書いたものを渡した。 「ありがとうございます」  受付は笑みを浮かべていて、内容を確認すると奥の通路を手で示した。 「それじゃあ椎葉さん、施術室へ案内します。こちらへどうぞ」  後に付いていくと大きな扉があった。受付がそこを開けると…… 「いやだあぁぁ死ぬぅー!!」  店名を疑うような悲鳴が最初に鼓膜を刺激してきた。声のした方を見ると、個室の引き戸の隙間から必死に這い出ようとしている男と目が合う。 「た、助けてくれ!」 「は……?」 「殺されるっ!」  男の言葉に困惑していると、引き戸からライオンが顔を出して困り顔を浮かべていた。 「こらこら、他のお客さんに誤解されるような変な事言わないで。まだ終わってないですよ。もう少しだからねー」  ライオンの獣人はお騒がせしましたと俺にお辞儀した。そうしたかと思うと部屋に引っ込んでいき…… 「いーーやーー!?」  恐らく、這いつくばっている男の足を掴んだのか、男は部屋に引き摺り込まれていった。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加