ハルキと狼の友人

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「まさかお客さんとして来るとは思わなかった。会えて嬉しいよ。元気だった?」 「あぁ、まぁな。一応元気だったぞ」  どういう生活を送ってたとかはさすがに話せないから、答えは曖昧。わざとらしく笑って目を逸らしたから、ギルも不審に思ったかもしれない。  昔みたいに気さくな笑みを浮かべてくれるギルの気持ちは正直嬉しかった。自分の都合で連絡を少しずつ絶った俺なんかにも優しくて、今まで接してきた奴等との違いを思い知る。   とりあえず話題を変えようと思って、今日来た目的を俺から切り出した。 「えっと、ギルがマッサージしてくれるんだよな?」 「うん。友人の為だから一生懸命やらせてもらうよ。それじゃあカウンセリングから始めるね。どうぞ」  部屋にはマッサージベット、隣にはテーブルと椅子が置いてあった。施術前に軽く話すらしい。勧められて対面で座り、奴は俺が書いた問診票を真剣に見ていた。 「腰が痛いんだね。あと、疲れも溜まってるってチェック付いてるから、腰を重点的にしながら全身揉みほぐすね。仕事忙しいの?」  マッサージだけされるものと思ってたから、そんな質問は俺にとっては予想外。けど、たまたまそういうタイミングだったから仕方ない。 「いや、今は新しい仕事探してる最中なんだ。最近辞めたばっかで、仕事探して走り回ってるからかもな」  バイト先でαと揉めて辞めた。もう何回仕事が変わったかわかんねぇ。Ωが長期で働ける職場もヒートのせいでなかなかなくて、仕事探しはいつも苦労する。  飯奢ってもらう為に夜の相手して腰痛めたなんて、さすがに言えねぇから嘘付くしかない。仕事探してんのは本当だけど。  後ろめたさを感じながら、自分から罪悪感を背負う答えを口に出していた。 「そっかー、ハルキも頑張ってるんだね。お疲れ様」 「お、おぅ」  マジで顔に疲れが出始めた俺を前にして、ギルは立ち上がって意気込み出した。 「よし、じゃあ僕がハルキの疲れ取ってあげるね! ベットにうつ伏せになってもらっていい?」 「わかった」  嘘を付いた相手にこれからマッサージしてもらうなんて……すげぇ薄情だな俺は。頼むから、なるべく足つぼみたいに痛くしてくれ。  心で強く願った。
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