梅と思い出

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梅と思い出

気が付けば、満開の梅園にいた。暖かな風が吹いて、薄桃色の花弁がさあっと舞う。 その風に乗せられて、女の子の泣き声が聞こえた。すすり泣く、孫の声が。 十歳になる孫。私のかわいい、小さな子。 きっと十年後、君は美しくかわいらしい子になっているだろう。 私はその姿を見ることができない。 「ごめんなぁ」 つぶやく声も、風に流された。 *** 今日は成人式。 私は青地に薄桃色の小花が咲いた振袖を着ていた。 大好きだった祖父が、十年前に遺してくれたもの。 家を出る前に、仏壇の前で手を合わせる。 ふわりと、どこからか暖かい風が吹く。梅の花の香りが鼻をかすめる。 祖父の、好きな花。 十年前には言えなかった言葉。幼すぎて、伝えられなかった思い。 「おじいちゃん、ありがとう」 素敵な振袖を。素敵な、思い出を。
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