14歳

1/1
前へ
/2ページ
次へ

14歳

 大人になるにつれて夢は小さくなっていく、と担任が言っていた。  だから小さい頃は、夢は大きく持てと教えられるのだと。  確かにわかる。僕だってそうだ。  幼稚園の頃の夢は、ゴジラになって世界を滅ぼすことだった。  小学生の頃の夢は、石油王になって宮殿に住むことだった。  中学生の頃の夢は、プロ野球選手になってメジャーに行くことだった。  ゴジラが石油王を経て人間になった。小さくなってる。  じゃあ高校生になり、さらに大人になればもっと小さくなるのだろうか。  それは少し寂しいな、と受け入れつつも。  心のどこかで、いやそんなわけないと抗いたい気持ちもあった。  だから僕は10年後の自分に向けて手紙を書いた。  内容は一言。 「あなたの夢は何ですか?」  その手紙は担任に渡した。 「10年後の僕に渡してください」 「俺さ、10年後のお前と会える気しないんだけど」 「探し出して渡してください。僕はきっと忘れてるので」 「え、無責任すぎんか?」 「先生を信頼してるんです。それを見たら全部思い出しますので」 「……こりゃあ長生きしなきゃな」  苦笑しながら、担任は僕の手紙を受け取ってくれた。  僕は嬉しかった。 「ま、生徒の夢を叶えるのが教師の仕事だな」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加