無垢なる願い

3/3
前へ
/3ページ
次へ
その何日か後に、君はパパとママと我が家にやって来た。 ママは大事そうに、でも不安そうに君を抱っこしていたっけ。 僕は、君を最初に見た時、パパとママと何でこんなに体の大きさが違うんだって驚いた。 僕のおもちゃ位のサイズだったから。 それがこんなに大きくなって、今では僕を軽々抱っこしちゃうんだから。 弟に抱っこされるなんて、情けなくなっちゃうよ。 君と出会って10年、もう僕は人間で言うと、おじいちゃんになっちゃった。 これから、あとどれくらい一緒にいられるのか分からないけど、 君のお兄ちゃんでもおじいちゃんでもいいから…… 薄れていく意識の中で、君と出会ったあの日の幻影を見ていた。 「生まれてきてくれてありがとう」 10年前の君にそう告げて、僕はそっと瞼を閉じた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加