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10年後の俺
――拝啓、高渕啓太郎どの。私は10年後のきみです。
10年後の俺から手紙が届いた。
――本日、私は女上司の前で上半身を露わにしながら罵倒されるという貴重な経験をしました。その興奮冷めやらぬまま、時を越え手紙を書いています。
信じたくないくらい気持ち悪い手紙が届いた。
「……10年後の俺ェ!!」
なに。
どういうこと。
待って待って待って。
拝啓からジェットコースターで意味が分からない。
変態じゃん!!
俺、変態になってるじゃん!!
なんなの、俺のこれからの10年に何があったの!?
ダメだ、理解ができない。
既に冒頭で情報量が多すぎるが、どうでもいい内容過ぎて核心が見えない。
未来の俺が変態なことしか分からない。
もうちょっと手紙を読もう。
――10年前のきみには思いもよらないことでしょう。きみの周りにこれから、汚らしい言葉で罵ってくれる女教師、女先輩、女家庭教師、留置所の女警官が次々現れるなんて。
「どうでもいいよ!!」
また核心から遠ざかった!!
なに、未来からの手紙ってこんな内容スッカスカでいいの!!
普通、「未来を変えてくれ、過去の俺」とか、そういう感じでしょ。
これから出会う、自分を罵る女性の羅列を送られても困るよ。
いや、待て。
「つまり、この人たちが俺の性癖を捻じ曲げたのか?」
だから、俺はこんな拝啓即気持ち悪い変態になったのか。
そんな俺を変えたくて手紙を寄越したのか。
彼女たちに気をつけろと。
なるほど。
それなら分かる。
未来から手紙がくる青春SFの奴だ。
留置所の女警官がすげー気になるけど。
なにやったのかがすげー気になるけど。
――こんな手紙を書いたのは他でもありません。きみに、未来の私を変えてほしいのです。
「ほらきた!!」
――そう、女性に罵られるときは肌を露出してほしい。その方がより気持ちがいい。
「さらに手遅れな奴だ!!」
――機会があれば服を脱いで欲しい。あわよくば上だけじゃなく下も脱ぐ。そんな変態になって欲しい、そう思ったからにほかなりません。
「ほかなりませんじゃねえよ!!」
もっと託すもんあんだろ!!
というか、変態だって認めちゃったよ!!
もう手遅れだよこいつ!!
未来の俺なんだど!!
――この手紙を読んだきみが、女性の前で果敢に脱げる勇気を持つことを私は願っております。敬具。
「手紙終わっちゃったよ!!」
――追伸。今度、女上司に冗談でプロポーズしようと思います。わくわく。
「やめておけよ!!」
10年後の俺ェ!!
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