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僕の目の前でケーキを頬張る。口の端に生クリームをつけて、嬉しそうに目を細めている。イチゴのショートケーキを買おうとしたら、メロンがいいと言われた。
君が好きなメロンを彼女も好きだ。僕は、それが嬉しくて堪らない。
「ねぇ、パパ。はい」
フォークにメロンを刺した彼女は笑って、「あーん」と僕の口元に差し出す。
君の場所から、僕らが見えているだろうか。
僕たちの娘は、もうすぐ十歳になる。「つ」のつく歳は卒業だ。最近、笑う顔が本当に君に似てきた。
君のいない毎日にまだ慣れないけれど、僕らはそれなりにやっている。君が残した愛の証は、悲しみの涙を忘れるほど、嵐のように僕を振り回し、求め、無償の愛を僕に注ぐ。僕も負けじと愛を注いできた。
十年前の僕たちには考えられなかった生活が、今ここにある。
君のいない夏が、またやって来る。
今年はどう過ごそうか。それが、目下僕らの幸せな悩みだ。
八月になったら、君に会いに行くよ。
君の好きなひまわりの花束を持って、僕と彼女、二人で。
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