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10年前の君に託す未来
僕は家族であるロボット・ドリームを呼ぶ。
外は騒々しく身の危険を感じながらも部屋に閉じこもっていた。
「ドリーム、今から言うこと届けて」
「了解しました」
★★★★★
僕は10歳の誕生日を祝ってくれるという祖父母の家を訪れた。蝉が鳴き始め、太陽がじりじりと照りつけ汗を拭った。
「もうすぐ真一が斎藤くんと来る時間だろう」
「そうね。明、二階にある座布団を取ってきてくれ」
「はーい」
父・加賀真一は研究者で忙しい。父は仕事のことを一切話さないためどんな研究をしているかは分からない。しかし、父の親友である斎藤宏樹が家に来た時、珍しい生き物を見せてくれたので生物にまつわる仕事なのだろうと思っている。
「座布団はここかな」
斎藤は家族ぐるみでの付き合いで僕とも仲が良かった。息子がいて同い年らしく誕生日会に連れてきてくれると言っていた。
二階の押し入れから座布団を取り出そうとした時、奥で何かが動いた。
「光ってる。もしかして僕への誕生日プレゼント⁈」
奥から取り出したのは白くて丸い、雪だるまのようなロボット。ボディにはドリームと刻まれている。
目が光り電子音が聞こえた。ワクワクしながら待っていると声が聞こえた。
「僕は加賀真司、10年後の君だ」
★★★★★
はじめまして、10年前の君にこの電子メールを送った。
突然のことに驚いているだろうが最後まで聞いて欲しい。
君の世界、つまり10年後の世界は大変な状況になっている。
斎藤博士の研究で科学技術は進み、生活は豊かになった。空飛ぶ車に、ロボットとの暮らしもある。
けれど、物が変われば人も変わった。
人体の遺伝子改良。
人間が持つ能力を上げ、より強い人間を作り上げようとした。様々な生物と遺伝子を組み合わせてもいる。実験体は研究者たちに友好でゴホッ、すまない。
時間がないから手短に言うが、10年後には人間と改良された人間が存在し対立している。
まだ10歳の君には難しいかもしれないが実験は既に10年前から始まっている。
これを聞いた後に、斎藤博士の研究所にあるデータを全て消去してほしい。ただし、斎藤博士にはこのことを話さずだ。
無茶なことを言っているのは分かっている。しかし、君にしか頼めない。君と君の大事な人の未来を助けてくれ。
もうそろそろこっちにアイツが来る頃か。ドリーム、この内容を10年前の加賀真司に送ってくれ。
僕は10歳の誕生日に、平穏な日常を脅かす足音が近づいていることを知った。
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