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地獄の底の未来より
タイムマシンが実用化され、多くの施設に配備されてから一週間。
まだまだ僕等の話題はそれで持ちきりだった。残念ながら過去も未来も簡単に行けてしまうので、使用には面倒な許可がたくさん必要という問題はあるのだけれど。
それこそ現状では、過どうしても過去や未来の情報収集が必要な研究者達くらいしか許可が降りないとは聞いている。確かに一般人が簡単に時間旅行できるようになってしまったら、私利私欲で使う者が後を絶たなくなってしまうだろう。
特にそう――過去の失敗をやり直したい、とか。
未来の自分は、夢を叶えているのかどうか、とか。
そういう個人的なことが知りたくてたまらない人間は、少なからずいるはずである。
まだ高校生である僕の周りの皆も、それは同じであるようで。
「過去やらかした失敗も取り消したいけどさあ。俺はやっぱり、未来が知りたい!」
僕の親友である彼は、悔しそうに教室の椅子でふんぞり返った。
「特に!美沙と俺は幸せな家庭を築けているのかどーか!」
「リア充爆発しろ」
「うるせえ!十六年間ぼっちでやっとできたカノジョなんだ、お前も少しはお祝いしろよコラ!」
「はいはい」
まったくもう、と僕は呆れてしまう。悔しそうでありながら、彼の口角は上がり、ニヤケが止められないのは明白である。今日も放課後から、大好きな“美沙ちゃん”とのデートが待っているというのだから尚更だ。まさに、幸せの絶頂というやつなのだろう。
「なあなあ大地。お前の親父さん、タイムマシンの研究開発チームのメンバーだったんだろー?」
彼は気持ち悪くニヤケながら、僕の前にずんっと顔を突き出してくる。
「こっそり身内特権で、タイムマシン使えたりしないわけ?」
「だからー無理だってば。何回同じこと言わせるんだよ。親父は確かにメンバーの一人だけど、俺もお前もただの一般人。身内贔屓とか絶対させちゃだめなやつだろ」
「えー」
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