86%の母

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 お腹に赤ちゃんを授かったとき、病院で受ける様々な検査の中に、それはある。  異常が見つかったところで、どうしろと言うのだろう。妊娠を継続するための検査を受けたはずが、いずれ自分の命すら脅かす病変があると言われ、赤ちゃんを諦めて治療しろと言われるって、何なんだろう。  或いは、そこまで進行していなくても、産んでから治療なり手術して、再発という爆弾を抱えて育児をするのか。  一番軽くて5年生存率86%ってことは、14%に入ってしまったら、赤ちゃんは小学生になる前にお母さんを亡くしてしまう。  そんな状態で産むのは無責任じゃないのか?  いつかあなたちに、そう思う時が来るかもしれないけれど、許してね、こどもたち。  それでも、お母さんは産みたかったの。会いたかったんだ。一度も会ってないのに、あなたたちのこと、もう大好きだったんだもの。  本当は、会えただけじゃ嫌。小学校の入学式、卒業式。だんだん大人になっていくあなたたちと一緒に悩んで、苦しんで。進路の話、恋の話、聞きたい。成人式の振袖は一緒に選ばせてもらえるかな?  でも、できないかもしれないから、まだまだ小さいあなたたちを、嫌がられるまで、毎日ぎゅうぎゅう抱き締めているんだ。  ひとつだけアドバイス。あなたたちが迷ったとき、もう、お母さんがいなかったら思い出して。  喉が渇いてるからって、洋服を買っても満たされないよ。  本当に欲しい物、本当に必要な物を、自分自身によおく聞いて。答えは自分が、きっと、ちゃんと持ってるから。  自分を信じて。あなたたちは、素晴らしい。  そして、十年後の私。絶対生きてろよ!
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