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letters
10年後の君へ―――
担任の提案でそんな手紙を書いてタイムカプセルに入れたのは、中学の卒業式。
そして今日はそれからちょうど10年目。
久々に集まった同級生達と会話を弾ませながら、タイムカプセルを掘り起こした。
15歳の私が書いた今の私への手紙は、何だか照れ臭いような、でも身が締まるような新鮮な感想を覚えた。
だが、私宛の手紙がもう一通見つかったのだ。
心当りがない私に誰かが言った。
「きっとあいつじゃない?ほら、お前のこと好きらしいって噂あったし」
私はドクンと胸が騒いだ。
噂の彼のことをよく覚えてるから。
「でも噂だけでしょ?」
別の誰かが言った。
この場にいる人は誰も知らないだろうけど、私は、卒業間近、彼に告白されていたのだ。
でもその数日前受験に落ちたばかりだった私は、彼を思いやる余裕がなかった。
志望校に合格した彼に、ついきつめの口調で断ってしまったのだ。
完全に八つ当たりだった。
今でもその時の彼の傷付いた表情は脳裏に焼き付いて消えてくれない。
激しい後悔が、その後の私の人生に付き纏っていた。
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