十年後のキミへ

十年後のキミへ
飯食ってる？
手紙の書き出しがこんなだと「オカンか！」ってなってるだろうけどさ。なーんか最近、ダイエット！　とか言って全然大盛りの飯に付き合ってくれないんだよなー。つまんねー。っていうことで、十年後のキミに向けて文句を書いてるだよな。
今のキミは、夢が無いとか悲観的なことしか言わないんだけど、夢出来た？
もしかして、叶えちゃったり？
まさか！　俺の……！
なんてな。
俺より可愛い恋人出来たりしちゃった？
妬けちゃうなぁ。
誰のためのダイエットか知らねえけどさ、俺より良い男なんて、そうそう居ないと思うよ？
やっぱり気になるからさ。
どんなやつか、ちょっと今から見に行くわ。待っててよ。

ポストに入っていた手紙をリビングで一人、読んでいた。カーテンが揺れたと思ったら、昔よりぽっちゃりした夫に後ろから抱き締められた。昔、名前も知らないモデルを「可愛い」と言っていたキミが私を抱き締めた。ぽっちゃりなキミは、暖かかった。