4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
10年は夢のよう
「……?」
目が覚めた時、僕は妙にボーッとしていた。
まるで10時間くらい寝ていたような、眠り過ぎな感覚。なんだか朦朧として、うまく頭が回らない。今日は平日だっけ、それとも、学校なんてない日だっけ……?
そこまで考えたところで、ハッとする。そもそも、目の前に見える天井は、僕の部屋のものではない! 学校のような公共施設にありがちな、無機質なタイル張りの天井だった。
「……えっ、ここはどこ?」
叫んで起き上がろうとして、腕を動かしたら小さな痛み。見れば、右腕にも左腕にも針が刺さっていて、そこから管が延びている。
そんな僕の動きや声に反応して、
「患者さんが目覚めました!」
という言葉も聞こえてきた。どうやら、ここは病室だったらしい。
続いて、医者やら看護師さんやらが訪れて。
ようやく僕は、事故で10年も昏睡状態だったと知らされる。
ああ、なんということだ! まだ10代の少年だったはずなのに、一眠りしたら、もう20代後半だなんて!
もしも10年前の僕にメッセージを届けられるならば、これだけは伝えたい。
自転車には気をつけろ、と。
避ける時は右ではなく左へ避けろ、と。
そうしないと車道に飛び出して、キミは青春時代を失うぞ、と。
(「10年は夢のよう」完)
最初のコメントを投稿しよう!